福岡市博物館(福岡市早良区百道浜)で開催中の影絵作家の藤城清治先生の展覧会、「藤城清治 100歳 美しい地球 生きるよろこび 未来へ」展に行ってきましたので、その時のことを書きたいと思います。
私が幼少時代に、雑誌『暮らしの手帖』に連載されていた「お母さんが読んで聞かせるお話」シリーズの挿絵が大好きで(家に暮らしの手帖のバックナンバーがたくさんあったので)何度も読んでいた思い出があります。
あまりにも好きすぎて何度も読みたがるので、『ロンドン橋でひろった夢』や『銀河鉄道の夜』の絵本を買ってもらって、それも何度も読み返していました。今でも大事に持っています。
そのくらい先生の作品が昔から大好きなんですが、今まで印刷物や小さなディスプレイ越しにしか作品を見たことがありませんでした。
実は10年前にも卒寿(90歳)記念展が同じく福岡で開催されていたのですが、その時は気付かなくて行けずに後悔していたんですよね。
100歳記念展も福岡で開催という情報を去年聞いて、今度こそ絶対に行くと決めていました。日曜の朝に半分寝ながらNHKの日曜美術館を流し見していたら展覧会情報のコーナーで開催中の情報が放映されて、一気に眠気が飛びましたよね。(行くのは確定なのに会期チェックしてなくて慌てた人)
作品の展示方法から演出も含めて、夢のように素敵な展覧会でした。
展示室内撮影不可なのでお写真はないのですが、ぜひ現地に足を運んでその目に焼きつけてきてください。
各ニュースメディアさん撮影のお写真があるので会場の雰囲気を知りたい方はこちらからどうぞ。
こんなに空間含めて完璧に世界観を作り上げていることってないのではないかと思えてしまうほど、入り口から出口に至るまでのすべてが素晴らしかったです。
影絵の展示がメインなので、映画館のように暗く、作品が闇の中に浮き上がって幻想的な空間が広がっていました。一歩一歩進んで、眺めるたびに新鮮な驚きと喜びに出会えます。
影絵ならではの演出だなと感動したのが、手前に水を張った水槽を設置して、水鏡に映すという展示方法です。さざなみの中に光が反射してかすかに揺らめいて、静の空間に動が生まれるんです。ただただ美しいだけでなく、作品の世界と現実が混ざり合うような不思議な感覚でした。
水鏡を使った展示は何点かあったのですが、中でも私が好きなのが
曼珠沙華とともしび (2003)
彼岸花の別名である曼珠沙華ですね。川岸の向こうを見ているようで、彼岸と此岸(あの世とこの世)という言葉を考えていました。
会場内が暗いので、スロープがあるところには足元にライトが付いているのですが、そのライトカバーにも作品が描いてあって、粋な演出に心が躍ります。まさかまさか踏んでは歩けまいと、足元に注意しつつ慎重に動けたので、結果的に暗闇でもとても安全でした。
間仕切りの透明なパーティションにも先生の作品が描かれていて、「こんなところにも!可愛い!」と思って眺めていました。
パーティションの裏側の展示を見ようと移動してきたときに後ろの照明にパーティションが照らされて、その時に気付きます。「影ができてる!」
これも全部、偶然ではなく、演出なんですよね。細部まで本当にすごかったです。
東日本大震災や広島の原爆ドームなどの作品もあり、遣る瀬無さや悲しみの中にそれでも未来への希望を感じました。
福岡にちなんだ作品も多くて、山笠や、天神祭など作品の数々がとても素敵でした。
花火の表現が本当に綺麗なんですよね。
「先生に作品にしてもらえる都市、福岡、街並みも文化もすごいな!!」と心の中で思っていました。(私は福岡民じゃないので)
先生の作品は結構見ていると思っていたのですが、今回初めて見る作品も多くて、しかも、想像していた10倍くらいは大きい物もあって、まさに圧倒されました。
葉っぱの一枚一枚も、窓の一枚一枚も、もちろん手作業(カッティング)です。
作品を作るのにどれだけの歳月と、どれだけの心血を注いだのかと、想像するだけで涙が出てきます。
作品の制作年を見るたびに
「1年間でこんなに作ってるの!?」
「最近の作品の方がアップデート(グレードアップ)してない!?」
と、目を見張り、感嘆するばかりでした。
全編通して総括すると、今まで見ていた作品はごくわずかで、今まで見ていたと思っていた色彩にはデバフがかかっていたんだな、ということです。
特に美しいのは「火」や「日」の「光」の表現です。伝わってくる熱量が全然違うんですね。実際に自分の目で見ないと気付けなかったです。
会期が2024年6月5日(水)までで、ご紹介するのが遅くなってしまって申し訳ないのですが、お近くにお住まいの方はぜひ行ってみることをお勧めします。
今まで藤城清治先生をご存知なかったという人でも十分に楽しめるし、ファンの人は多分泣き出しかけるくらい(比喩ではなく、ほんとに涙目になる)きっと一生心に残る展覧会でした。
会期と会場についてはこちらをご覧ください。
福岡が遠くて行けないよ!という人には那須高原の藤城清治美術館がお勧めです。
なんと、藤城清治美術館は先生より年上の方じゃないとシニア割適用されません。
現在「100歳以上のお客様」となっております。
藤城先生、いつまでもお元気でお過ごしくださいね。
先生の作品がもたらす光が世界の人々の心に届きますように。
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